故郷忘じがたく候 を訪ねて
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 12月27日、故郷忘じがたく候の文庫本を携えて羽田から鹿児島へ飛びました。
 空港でレンタカーを借り、一路苗代川へ向かう予定でしたが、地図を見て、空港近くの加治木に「龍門司焼き」の記載を見つけました。
 先日、韓国を訪れた際に豊臣秀吉の出兵による惨禍を体験してきたのですが、その際に連行された朝鮮人陶工により九州各地で優れた焼き物が始められました。
 龍門司焼窯元を訪れると、たいへん親切に応対してくださり、なかにある工房や登り窯を自由に見せていただくことが出来ました。
 龍門司焼は、黒釉青流しや三彩、鮫肌や蛇蝎などで知られているそうで、高価なものには手が出ませんが、手ごろな価格の黒釉青流しの湯飲みを記念に頒けていただきました。
 窯元の近くには有名な薩摩街道大口筋の石畳みが残っています。明治10年、西南戦争の際に大雪の中、総勢6000名の薩摩兵がこの坂を登ったそうです。「NHK翔ぶが如くロケ地」という看板が建っていました。
 同じく大河ドラマ「篤姫」第2話で輿入れの際のロケも行われたそうです。ドラマ篤姫は気が進まず見てないのですが、雰囲気のよく遺されている旧街道なので、機会があったら再放送を見てみたいです。
 加治木には、その他に龍門滝や金山橋(石橋)など魅力的な史跡名所があり、ついつい長居をしてしまいました。
 少し慌てて加治木ICから高速道路を走りました。すると加治木からは逆光でシルエットだった櫻島が、鹿児島市内に近づくにつれて綺麗に見えてきました。
 時間はあまりないけど、いままででいちばん桜島が綺麗に見えたもんだから、つい鹿児島で高速を降り、展望で有名な城山に寄り道をしてしまいました。
 鹿児島から南九州自動車道を走り、伊集院ICから県道を経て、いよいよ美山へ。桜馬場と呼ばれる往還の両側に窯元が並んでいます。
 400年窯という案内看板を見つけ車を沸きに進めると、薩摩焼400年を記念して作られた共同登り窯と日韓友好の炎という炉のある広場にたどり着きました。
 沈壽官窯は薩摩武家屋敷の佇まいでした。収蔵庫を見学させていただくと、初代からの名品の数々、特に大花瓶や透かし彫りの作品など素人にも芸術を感じさせる歴代作品が展示されていました。また、ロクロ成形から焼成まで一連の製作工程がわかるDVDも視聴することができました。
 店内に入るとテレビなどで拝見していた第14代沈壽官氏にお会いすることが出来ました。
 登り窯を見学させていただき、さらに壽官陶苑をぶらついていたら、敷地の一角に「故郷忘じがたく候」と刻まれた碑が建てられていました。
 朝鮮開国の神祖といわれる「檀君」を祀る玉山宮への道を沈壽官窯で教えてもらい、行ってみました。小高い丘の茶畑の小径を進むと古びた石の鳥居があり、車を停めて参道の石畳を進むと、木立の先の開けた空間に神社はありました。雑木林の背丈が小さければ400年前の陶工と同じように東シナ海を見ることができるのだと思います。
 朝鮮陶工が上陸したという地を訪ねようと国道3号を串木野に向かいました。本壷屋という地名を頼りに探したのですが、よくわかりません。
 車の中でネット検索したら、照島公園に碑があるというページを見つけることができました。
 いちき串木野市西島平にある照島公園に車を停めると「朝鮮陶工上陸の碑」という小さな案内標識がありました。矢印に沿って赤い橋を渡ると、照島神社の鳥居の脇に、薩摩焼開祖着船上陸記念碑と書かれた木柱があります。その横に、「慶長三年冬 はるかに風浪を越え 我等が開祖この地に上陸す 薩摩焼宗家十四代 沈壽官書」「と彫られた碑が建っていました。
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